ミユキさんはまだ〇〇を知らない。

日常の思うこと、感動したこと、あれこれ。

伝える人。

西川悟平さんというピアニストをご存知だろうか。
15歳という遅咲きでピアノをはじめて音大へ進み、卒業後はNYに渡って活躍するものの、ジストニアという難病にかかって両手の指が動かなくなり、医者は「一生、ピアノを弾けない」と宣告。しかし、懸命の治療とリハビリで、右手は全部の指が、左手は親指と人差し指(だったかな?)の2本だけが動くようになり、現在は“7本指のピアニスト”としてNYを拠点に日本でも活躍している。


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コンサートのチラシ。りりしいイケメンだが、話し出すと印象が変わる(笑)


縁あって、彼の日本でのコンサートに2回行ったことがある。
2回目はつい先日のことだ。
初めてのときは共演者が目当てで、悟平さんのプロフィール自体よく知らなかった。でも、悟平さんが舞台に登場し、演奏の前にマイクを握った途端、あ、面白い! と夢中になってしまった。


大阪の堺出身という彼は、ピアニストでもあるが、大阪人らしいオチ付きのミラクルストーリーをネタに持つコミックアーティストのようでもある。
きっと彼が、愛と素直さと希望を持っているからこそ起こり得る奇跡のような実話を、笑いすぎて涙が出るほどの大爆笑ネタとして披露してくれる。例えば、自宅を襲った強盗にバスルームの修理を無償でしてもらって、挙句に「ドアの鍵は簡単に開けるな!危険じゃないか!」と怒られた云々なんて話のオチは、まるで映画だ。
そして、ひとたびピアノの前に座れば、曲のジャンルこそさまざまなのだけど、一曲ごとが情熱的で、その音の熱風のようなものに、さっきとはまた違う涙がこぼれそうになってしまう。

トークにしても、メインのピアノ演奏にしても(トークの方がメインかと思うくらい沸くがww)“今、ここにいる人に思いきり楽しんでもらいたい”というような彼の超ポジティブな思いが、ストレートに伝わってくる。その直球な思いに、私なんかはやられてしまうのだ。


ハンデを克服して・・・という前提は、それだけで感動を誘うものかもしれないけれど、そのことだけがその人の素晴らしさのすべてではないと、西川悟平さんのコンサートに行くと感じる。
彼が7本指であることは、彼がピアニストとして評価されるプロフィールの一端だろうし、今の彼を形づくる欠けがたい要素かもしれないけれど、彼の魅力のすべてではない。少なくとも私はコンサートの間中、彼の指が7本しか動かないという前提を忘れてしまう。
“伝える人”というのは、きっと、私たちの想像が届かない大きな何かを超えているんだろう。


誰もが、毎日、超えがたい何かを超え続けて生きているのかもしれないが、それは人生のすべてではない。すべてだと自分が思った途端、人生を支配されてしまうだけだ。
2回目のコンサートの時以来、笑って泣いて広がった私のなかには、そんな真実が伝わっている。

機会があれば、ぜひコンサートへ!
https://goheinishikawa.com/